昔の八月十五日の出来事 |
投稿者: 二つ引両 投稿日時: 2023/8/15 17:00:35 戦前の郷土史「紀北伝説集」に収録されている『高山亡魂記』は江戸時代の本だが、その言い伝えは戦国時代の永禄年間に遡る 高山(和歌山市の高積山)に夜な夜な亡霊が現れ、民衆を悩ませていると耳にした紀伊の守護・畠山高政が追福慰霊を行うという話 その亡霊の正体は、高政の先祖の畠山義深に、南北朝時代の延文年間「龍門山の合戦」で敗れて散った南朝軍の将・塩谷伊勢の霊魂だった 龍門山で死んだ武将の亡霊がなぜ高積山に現れたのか? それは敵の畠山軍が陣を張ったのが背後の和佐山(今の城ヶ峯)だったからで、そこは元々南朝方の城だったのだ ところが地元の郷士・和佐が北朝の幕府方に寝返り、畠山義深に提供してしまい、それが元で南朝軍は敗戦、塩谷はこの土地を恨んで絶命した訳であった 派遣した臣兵より、亡霊が泣きながら呟くその内容を聞いた高政が憐れに感じ入り、武士の情けで追悼・・という物語 あくまで伝説だが、徳川時代を生きた江戸期の民衆にとっては、南北朝から戦国まで存在した殿様畠山氏はまだ身近な存在であったことを窺わせる興味深いエピソードである |