和歌山県議会平成20年2月定例会 一般質問 平成20年3月7日(金) 和歌山県議会議員 長坂隆司
 4.南海本線紀ノ川鉄橋について

 南海本線紀ノ川橋梁でありますが、平成15年9月の予算委員会、平成16年の6月議会の一般質問でも取り上げ
させていただきました。予算委員会では、平成15年に鉄橋建造100年を迎えて、東南海・南海大地震が勃発した
ときの耐震性、特に津波が襲来したときに持ちこたえられるのかお聞きしたところ、当時の企画部長の答弁で、
 会社として平成6年から継続監視を行っている。また本県の地域防災計画の鉄道施設災害予防計画において、
南海電鉄が鉄道施設の地震災害予防のための諸施設の整備を行うとしている。県としても会社に対して徹底の
申し入れを行う。 と答弁されました。水中での調査・補修を聞きましたら、企画部長が、 直近では平成13年
11月から14年3月まで大規模な詳細調査を行って、これに基づいて必要な補修を行っている。下部工・橋脚の
検査については、河床の変動調査と橋脚の衝撃震動調査を実施して、それについては異常がなかったと聞いて
いる。 と答えていただきました。平成16年6月議会では、 今年2月27日から3月31日にかけて、南海電鉄に
おいて 定期検査を実施したところであり、同社から耐震性及び津波の耐久性等、安全性については十分確保
されているとの報告を受けていると企画部長から答弁がありました。
しかし、減価償却資産の耐用年数等に関する省令によると、鉄道用の橋梁は鉄筋コンクリート造りのものが
年数50年とされています。南海紀ノ川鉄橋は今年で105年経過し、金属疲労、ピア(橋脚)の劣化ははなはだしい
と思います。それに橋桁の底も実に浅い構造なのです。上流が氾濫して大木が流れてきて、橋脚に激突したら
ひとたまりもないのではないでしょうか。
昨年8月にはアメリカにおいてミシシッピ川に架かる高速道路橋が崩落する惨事も発生しました。この橋は
わずか築約40年であったと聞いております。
 一方、南海の大規模複合商業施設 なんばパ-クス は平成15年に第1期完成、第2期は平成19年4月にグランド
オ-プンされました。
 すなわち南海電鉄は鉄道会社としての企業経営の第一の理念であるべき、大阪府民・和歌山県民をはじめと
する乗客の「命」と 安全 を守ることを放棄し、第二義的な表面的に華やかな商業開発の方へ貴重な経営資源を
突っ込んだのであります。2期オ-プンの直前、平成19年1月25日には7つの子会社を取締役会において解散する
ことを決議しております。
 南海和歌山市駅周辺は衰退し、かつての賑わいは失せております。乗降客も少なくなっております。以前南海
電鉄に勤めておられた運転手OBの方が 命拾いした といっているのです。 もともと4両編成であった電車が8両
編成になって荷重が倍増し、何10年も耐用年数を過ぎた南海鉄橋がいつ崩れるかと運転しながらいつも冷や冷や
していた と云うのです。私も競輪場下からボ-トで海釣りに出かけるときにこの鉄橋の下を通りますが、なん
とも古びた、カキ殻のいっぱい付着したレンガ橋をいつも眺めては大丈夫かと素人目に心配をしております。
実際に橋脚を水中撮影いただいたカラ-コピ-を入手しております。 橋脚に亀裂や破壊は見当たらなかった
ものの、上流側のコンクリ-ト面に5,6cmの剥離がいくつも発見されております。
 私の亡き父は南海電鉄の元社員でした。約27年間も南海にお世話になった者です。平成3年に亡くなりましたが、
そういえば、 近いうちに南海鉄橋は危ないぞ。崩落事故で県民の多くの命がなくなれへんか。 といつも心配
しておりました。鉄道会社が乗客の 安全 を放棄することは企業としての 使命 を放棄することに等しいと
思います。 何も起こらなければ大丈夫 ではすみません。まして東南海・南海地震も近々起こる確率が極めて
高いのです。 県民の命を守る べき行政も大至急厳しく対処すべきであります。大惨事が起こってからでは
遅いのです。事前に対応する、これが行政の責務ではないでしょうか。
 2007年3月20日付読売新聞に、現静岡文化芸術大学学長川勝平太氏と国土交通省技監谷口博昭氏の対談記事
『国土形成計画がスタ-ト』が載っておりました。今までは国力を上げるため、道路・交通網の整備を中心とした
全総 で国からどう変えていくかという視点でありましたが、これからは大きく変わって、 国土形成計画 になり、
国と地方が協働してビジョンづくりを進めるとともに、地域ブロックごとに地域の独自の計画を実行していく時代
だといわれています。すなわち、阪神大震災の悲劇を教訓に地方自らが自立して地域住民の生命の安全を確保して
いく時代なのであります。
 知事、県下にあるたくさんの橋のうちの1つの些細な問題と片付けないでください。県民の命を守ってください。
ぜひ南海電鉄に強く働きかけて紀ノ川橋梁の改築を実行させてください。知事に答弁を求めます。また、企画部長
には平成15年9月の予算委員会、それに平成16年6月議会の当時の企画部長答弁に間違いはないかお答えください。

 (知事答弁)
(1)    南海本線紀ノ川橋梁の改築についてでございますが、鉄橋の健全性については、私も、県民の 命 と 安全 に
関わる大変重要なことであると考えております。なお、南海電鉄からは、東南海・南海地震などの地震対応について、
平成16年から平成17年に橋脚の耐震性能評価を実施し、橋脚の安全性が確保できる結果が得られ、併せて、平成18年
10月には震度5弱以上の自身が到達する前に停止を指示する、緊急地震速報システムを投入したと報告を受けております。
しかしながら、議員ご指摘の趣旨を踏まえ、今後とも、南海電鉄に対し安全性の確保を図るよう、強く申し入れを行って
いきたいと考えております。

  (企画部長答弁)
(2) 議員ご指摘の平成15年9月予算委員会及び、平成16年6月議会での当時の企画部長答弁につきましては、私も改めて
確認をいたしましたが、いずれもそのとおりでございます。

(再質問)
 南海鉄橋の件で再質問させていただきます。
1.平成15年9月議会予算委員会での企画部長答弁の中にある補修というのは、どんな工事でしたか。どの程度の補強をした
のですか。具体的にお答えください。

2.平成12年後半にはすでに南海電鉄の内部的な意思決定機関で2億円くらいの必要な補修を決定していると聞いておりますが、
事実でしょうか。

3.補修を行うということは南海電鉄も紀ノ川鉄橋の改築の必要性を認識しているからだと思います。補修を行ったのは企画
部長答弁によれば平成14年頃になると思うのですが、その前に橋梁の改築の話が南海側からあるいは河川管理者たる当時の
建設省から県側へ説明がありませんでしたか。

4.県側への改築説明がないというのなら、県から会社へ紀ノ川橋梁の改築計画があったかどうか事実関係を問い合わせて
みてください。運輸事業というのは所轄省庁の監督下にあるものです。南海電鉄内部で紀ノ川橋梁の改築を決定していたのか
どうか行政には調査する責務があると思います。
私が議政壇上でお尋ねするからには確固たるものを持って申しております。
 私の手元にある文書、平成12年12月20日付、南海電鉄、鉄道営業本部より、南海の関係各社へ、 南海本線紀ノ川橋梁の
改築計画について(報告) という文書が送られているではありませんか。その中に、 耐震性に欠けた橋梁であり、南海道地震の
再現周期も近づいていることから、平成10年7月22日付常務会において、全面改築の方針で詳細設計の実施と河川協議の開始を
進めることを可決いただいた とあります。平成10年には会社側は耐震性に問題ありと認めて改築しようと決定してるんですよ。
続けて、 本事業の実施は、工事規模・費用ともに大きく、経営収支に及ぼす影響が懸念されることから、 事業内容の精査に
よる費用最小となる工事計画  公的補助か助成金の適用  可能な限りの延命化 等を主眼とし、その後社内関係先並びに河川
管理者等と検討・協議を行った と続きます。 今回、改築計画の概略がまとまったので、本案により実施設計及び許認可申請
準備等を引き続き実施いたしたい とうたっております。工事計画では、まず工事方式として現下り線を単線通行で使用し、
現上り線と計画上り線とが同位置となる新橋梁を築造する とあり、スケジュ-ルは工事開始が平成17年度頃、新橋梁切り替えが
平成22年度頃という明確な計画がうたわれているのです。本来なら遅くてももう改築工事にかかっている時期なんですよ。
そして新橋梁への架け替えまでの延命対策として、 より適切な検査・診断と時機を逸しない最小必要限度の補修を行うことで、
延命化を図ることとしたい。なお補修概算総額は周期舗装を含め約2億円程度必要であると考えている と書かれております。
 その当時鉄道営業本部の統括部長をされていたのが亘現社長であり、鉄道営業本部の施設部長をされていたのが現常務で
現鉄道営業本部長の山部氏であります。当時橋梁改築の重要性を力説された、まさに当事者が今会社の中核を担っているわけで
あります。県から南海へ強く抗議してもいいと思うんです。
 この内部文書を見ますと、平成15年、16年の私の質問に対する当局の答弁は不誠実、 偽り になるのではないですか。平成
10年7月22日付で全面改築の方針が打ち出されていること、平成12年12月20日に改築計画が配布されているということは、
それ以前に調査をして認識しているはずであります。県にも当然改築にあたっての相談があったはず。それなのに、平成13年
から14年に調査・補修をしたとだけ答弁しているのは、その時間的ずれをどう説明するのですか。納得いきません!企画部長
お答えください。

 (再々質問)
私は高松に住んでいますので、どちらかというと大阪へ行くのにJR和歌山駅より親父が勤めていた南海の市駅を利用することが
多い、今でも南海電鉄ファンです。南海が嫌いだから、憎いから申しているのではありません。県民の命にかかわる問題だから
云うのであります。あいまいな県の答弁、南海側の県当局への回答を総合しますと、納得できない、ぜひ調査する必要があります。
質問を留保して特別委員会を設置して、なお詳細を県議会の問題として調査する必要があります。後刻、議長、会派から申し
入れをさせていただきたいと思います。府県間道路が大事なように、南海本線も和歌山県と大阪府をつなぐ、和歌山県民にとっては
なくてはならない交通手段であります。ぜひ前向きに県が、そして県議会が全体の問題として対処していくよう要望させていた
だいて、本日のところは時間ですので終わります。